昌平中学 (4)

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4月7日(金)昌平中学校の入学式が行われ、85人が入学したという。

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先日当ブログは、本校が96人程度の新入生を見込んでいるのではないかと予想していた。さすがにそれは楽観的な読みであったが、少なくとも入学者数が増えるという予想は当たった。歩留まりも3割を越え(32.9%)、初めて定員(80人)を充足した。ウェブサイト掲載の画像を見ると、中1は3クラス編成になったようだ。

これらは、2016年度大学入試において同校併設の高校より3人の東大合格者を出した効果であると言える。

あとは一貫生が東大なり国公立医学部医学科なりに合格すれば、また結果が変わってくるであろう。

校名に見る私立校の思惑 (2) ――帝京大学グループの場合

第89回選抜高等学校野球大会(2017年、センバツ)には愛媛県大洲市帝京第五高校も出場していた。

ちなみに帝京第三高校は山梨県北杜市に所在する。ところが不思議なことに、帝京大学帝京科学大学帝京平成大学などの帝京大学グループには、「第一高校」「第二高校」「第四高校」は存在せず、また過去に存在した形跡もない。

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調べる過程で頭が混乱した。

「第一」「第二」「第四」がない理由はもはや確認しようもないし、そもそもなぜ第三(帝京学園)と第五(帝京科学大学)の運営法人も違うのかも理由は不明だ。

帝京冨士(とみす)は全寮制らしいから、同じ市内でも第五とは受験者層は重ならないかもしれない。しかし帝京大学高校帝京八王子高校も同じ八王子市内にある。生徒募集のときにパイを食い合いはしないのだろうか。

結論として辿り着いた推測は、恐らくこのグループにおいて、帝京大学帝京学園帝京科学大学、冲永学園(と、これらに加えて帝京平成大学)の各法人は、ほぼ一体として運営されている、ということだ。もっとも、そうすることによるメリットもデメリットも今のところわからない。

ただ校名のつけ方や設置場所を見る限り、何やら無秩序な運営をしている印象を受ける。東海大(や日大)のように附属校を地域密着にして生徒を大学へと吸い上げようというわけではなさそうだ。

ウェブサイトを見ていると進学実績を強調したいようにも見えるので、その点では地域を捨て去り「帝京グループ」という拡がりのイメージを持ちたいのかもしれない。そのとき(特に難関の)大学進学において「帝京」という名前がポジティヴなイメージを持つ助けになるかは疑問であるが。

校名に見る私立校の思惑 (1) ――東海大学附属校 校名の変遷から

センバツ(第89回選抜高等学校野球大会)、3月28日(火)の東海大福岡早稲田実業の試合をテレビで見ていた。合間にアナウンサーが視聴者からの応援メッセージを読み上げた。「東海大福岡を応援しています。東海大五高時代の卒業生です。」

東海大福岡

言われてみれば聞いたことのない学校名であった。もっとも、東海大は日本中いたるところに附属校やら関係校やらを持っているので、拙に馴染みのない東海大ナニガシ高があってもおかしくなかった。

けれども五高が福岡に校名変更したという。

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調べてみると、近年、東海大附属のナンバースクール(一高、二高…)は揃って所在地名を冠した校名に変更している。付属望洋も同様に付属市原望洋に変わっている。

元々、静岡(旧・一高)は翔洋、市原は望洋というように、どういう意味が込められているのかよくわからないキラキラネームを背負っていた――熊本(旧・二高)にはせっかく変わったシワシワ校名に星翔というキラキラ要素もついでについてはいるが。

校名変更について、付属諏訪(旧・三高)は次のように言っている(原文ママ、強調は引用者)。

新校名である「東海大学付属諏訪高等学校」の「諏訪」には、本校が所在する長野県諏訪地域において、さらに地域根ざし、地域から愛される学校になる、という本校の強い決意が込められております。

東海大学付属第三高等学校:ニュース

同じく付属札幌(旧・四高)は次のように言う(強調は引用者)。

地域に根ざした「オンリーワン」の新たな学校をめざす改革の象徴として、校名変更を行うことが学校法人東海大学定例理事会において決定されました。

http://www.tokaisapporo.ed.jp/uploads/hs_news/232.pdf

東海大学の付属校は所在地回帰を考えているようである。

これは極めて興味深い現象である。というのも、最近の私立校は所在地名を含んだ旧名を捨て、見栄えだけはいいキラキラネームを選んできているからである。新設校でも同様の傾向だ。

当ブログでも紹介したことのある啓新慶進青翔開智開智開智開明翔凛と聞いて、それらがどこにあるかすぐにわかる人は相当の私立校中高マニアではないか。

埼玉県内において、開智と栄東が東大合格者数を伸ばしている理由として、岡林秀明は、校名から「埼玉」を除いたことにあるとみる。曰く、

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熱闘!東大合格市場あの超進学校がやっていること - 岡林秀明 - Google ブックス, p.228.

校名から地名を外すことによって、県域、市域などの地域を越えた生徒募集が可能になる、という発想はわからなくもない。恐らく、栄東や開智の躍進の理由の一部には、優秀な生徒が埼玉県内のみならず東京や千葉など他都県からも集まってきていることもあるだろう。実際のところ特別な事情がなければ、東京の受験生が埼玉とついた学校に毎日通いたいとは思わないだろう。

開智や栄東にはその系列校に大学はあるけれども、その大学を看板にして生徒集めをしてはいない。他方、東海大学という大組織は地域に根差して生徒募集をしようとしている――思えば日本大学の各附属校、係属校は(特別附属の一高、二高、三高と「日大日吉」、豊山など一部の正附属校を除けば)そもそもすでに地名を冠している。

地域を捨てる小組織と、地域に回帰する大組織、それぞれの意図が容易に透けて見えてくる。すなわち、東大を始めとする難関大に合格する高い学力を持った生徒を集めたい小さな私立校と、系列の大学に黙って上がってくれさえすればよい(ゆえに高い学力はいらない)生徒を集めたい附属校、である。

昌平中学 (3)

前回のエントリに引き続き、併設の高校での東大合格が中学の受験者数や入学者数に影響するという説を検証する。

以下は、昌平中学の受験データである。

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2016年度の受験者数が前年比で200%超、入学者数(73人)も過去最高となったのは、3年ぶりに高校で東大合格者(1人)が出たからだと思われた。けれども2017年度入試において、受験生たちは東大合格3人という数字を目の当たりにしているはずだが、受験者数(461人)は前年(466人)とほとんど変わりがない。

併設高校の東大合格者については、それがないと中学の人気が落ちるとは言えそうだが、毎年出たからと言って中学の人気も右肩上がりになる、とは言えなそうだ。

不思議なのは、2016年度において合格者を絞っている――合格率42.3%という数字は、今まで一番低い――のに、73人という入学者が残ったことである。歩留まりは37.1%という過去最高に高い数字である。

他方、次年(2017年)度は合格率56%である。仮に2016年度と歩留まりが同じであるならば、96人程度が入学生として残ることになる(258人×37.1%≒96人)。

意外に思われるのは、歩留まりが毎年伸びていることである。

合格ラインを何点にし、何人合格者を出すかのさじ加減は、ひとえに入試担当者の判断によるが、それはもはや職人芸、カンの世界だと聞いたことがある。各塾が行う模試での志望校順位だとか、入試後のアンケートなどから判断するらしいが、受験生のキモチなど簡単に読めたものではないだろう。

昌平中にかんして言えば、これまで一度も定員(80人)を満たしたことがないので、入学させたい学力を持った生徒だけが残るように合格ラインを設定しているとは思われる。そのうえで歩留まりが伸び続けているのだから、次年度も入学者数が増えるかもしれない。

ところで、併設高校での東大合格と中学の人気との相関関係については、開智未来中学を例に見てみよう。同校は埼玉県加須市に所在する中高一貫校であるが、昌平とも地理的にも難易度的にも近く、競合していると言ってよい。

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2015年度に初めて併設高校で東大合格者が出て、その翌年(2016年)度の受験者数は前年比124.6%となった。けれども2017年度は15年度の水準に戻っている。

開智未来を見てもわかるように、東大合格者が出ないと中学の人気は落ちるが、出ても人気が上がり続けるわけではないようだ。

一貫校にとって毎年1、2人程度の東大合格は最低限の条件なのかもしれない。

ただし前回も述べたように、その東大合格者は一貫生ではなく、高入生かもしれない。高入生の実績に憧れてその中学に入ることは果たして賢明であろうか。その意味では、一貫1期生から東大合格者を出した開智未来のほうが、東大志望の中学受験生には希望を与えるだろう。

昌平中学 (2)

埼玉県杉戸町に所在する中高一貫校である。今春2017年度大学入試において同校併設の昌平高から東大合格者が2名(うち既卒生1名)出たという。

本稿では昌平を例に、東大合格者数と中学入学者数の相関関係を見る。すなわち、東大合格者の出た年度(例えば2017年新入生を選抜する「2017年度入試」)の、翌年度(2018年度)は中学に入学者が増えるという説を検証する。

以下の表は、先日当ブログにおいて示されたものに加筆したものである。

  • 1期生(2010)43人
  • 2期生(2011)59人 ←2010(平成23)年度 東大1人
  • 3期生(2012)56人 ←2011(平成23)年度 東大0人
  • 4期生(2013)60人 ←2012(平成24)年度 東大1人
  • 5期生(2014)55人 ←2013(平成25)年度 東大0人
  • 6期生(2015)45人 ←2014(平成26)年度 東大0人
  • 7期生(2016)73人 ←2015(平成27)年度 東大1人
  • 8期生(2017)**人 ←2016(平成28)年度 東大3(1)人
  • 9期生(2018)**人 ←2017(平成29)年度 東大2(1)人

註1) 2010年度および12年度の東大合格者数については、同高校ウェブサイトの「過去3年間 主な大学の合格者数」を参照(以下にスクリーンショットを載せる)。

註2) 東大合格者数のカッコ内は、既卒生の数。

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もっとも、2017、18年度の新入学生数はまだわからないから、本稿は予備調査の段階に留まる。

また本稿が気になる、というか声高に確認しておきたいことは、昌平の東大合格実績は一貫生によるものではないということである(もしそうであるならば、同校の性格からして、ウェブサイトにそう書くだろう)。

白岡市にある塾の情報によれば、一貫1期生の大学合格実績は、国公立大で埼玉大1、電気通信大1、埼玉県立大1、の計3名ほかであるという(以下にスクリーンショットを載せる)。

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同校は学内に様々なコースを抱えているので、どのコースの生徒がどの大学に合格したなどといちいち分けて教えないことは、意図的にやっていることであろう。それはさておき、けれども、一貫部とはほとんど関係のない生徒による実績に目が眩んで、受験し進学する中学を選んでしまったとしたら、幸せなこととも、健全なこととも思われないのであるが、いかが。

(3月21日追記)上掲の表を更に整理し、まとめ直した。

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学校法人森友学園・瑞穂の国記念小学院 (2)

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http://kinki.mof.go.jp/content/000115032.pdf

上掲の画像は、大阪府豊中市の国有地が森友学園へと払い下げられることを審議した「第123回国有財産近畿地方審議会」の議事録の一部である。

それによれば森友学園の有する塚本幼稚園は「私立学校法人初の幼稚園」であるという。森友学園自身は「全国初の学校法人幼稚園」(コチラを参照)という言い方をしている。

どうやら、全国の学校法人のなかで一番最初に幼稚園を設置したのが森友学園である、という主張のようだ。

以下、時系列で年表をまとめる。

  • 1950(昭和25)年 塚本幼稚園 設立
  • 1953(昭和28)年 同 大阪府認可
  • 1971(昭和46)年 森友学園 設立

もっとも、日本私立学校振興・共済事業団が提供するデータベースによれば、森友学園の設立は1976(昭和52)年である(コチラを参照)。

1971年にせよ76年にせよ、この時点で全国で最初に幼稚園を設置したのが同学園というわけである。

ところで、例えば渋谷教育学園の設立は1951(昭和26)年(コチラを参照)、同学園の有する渋谷幼稚園は1949(昭和24)年の設立なので(コチラを参照)、1951年の時点で渋谷教育学園は幼稚園を有していたことになる。森友学園より少なくとも20年は早いことになるのだが。

「学校法人」について定めた私立学校法は1949(昭和24)年の制定なので、1971年まで幼稚園を有する学校法人がただの一つもなかったというのは常識的に考えても違和感がある。森友学園より幼稚園設置の早い学校法人はもっとたくさんあるのではないか。

学校法人森友学園・瑞穂の国記念小学院 (1)

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【募集】H28年度 小学校教諭募集(瑞穂の國記念小學院)|関西大学 教職支援センター

2016年度の募集である。

大阪府豊中市に2017年4月開校予定の市立小学校。本校の正式名称は「瑞穂の國記念小學院」(国と学が旧字体)であるが、ウェブ上での閲覧の便を鑑み、新字体にて表記する。

ただし本校がわざわざ旧字体を使いたがっていることそれ自体が、本校のイデオロギーを如実に表している。偏狭な日本愛国主義民族主義者はわざわざ旧字体を不必要なまでに多用する。もともとは戦前世界の憧れゆえにであったと思われるが、今となっては、そうすることがそれへの憧れを表していることを自覚している者がどれだけいるのかは、わからない。

設置者は当初「安倍晋三記念小学校」という校名にしたかったらしい。また「名誉校長」(ナンダソリャ?)には安倍昭恵首相夫人が就いている(いた?)。

月額は基本給21万円、手当2万円の計23万円。賞与は初年度2か月分の42万円、2年目以降は4か月分の84万円。従って1年目の年額は318万円となる。

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http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/14628/00000000/moderu.pdf

 大阪府における小学校教員の初任給と比較すると、2年目以降はほぼ同じになると思われる。つまり、同校の給料が特にいいというわけではないようだ。つまり、この学校でわざわざ教員をやるということは、同校のあの教育方針に賛同できる者だけ、あの教育方針に則ってわざわざ教育活動をしたい者だけであろう。