前任校の話 (関東地方某所) (1)

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いらすとやより拝借

先日、某教材出版社のとあるセミナーに参加したら、元同僚と再会した。ほぼ4年ぶりである。

前任校は一応中高一貫校であるが、中学の規模は非常に小さいので、受験業界での扱われ方は高校単独校である。

習熟度別同時展開授業の愚

彼と話していて、前任校ではいわゆる「コミュニケーション英語」(他校では「リーディング」などとも呼ばれるであろう)の時間に習熟度別同時展開授業を行っていたことを思い出した。

前任校におけるその同時展開授業とは、例えば2クラスを成績で輪切りにし、点数のいいほうをAクラス、悪いほうをBクラスと分けるのである(2クラス2展開)。同校は学力別のコースを複数有していたから、同時展開が行われるのは精々3クラスであった。

いま現任校で教えてみて、この同時展開授業はデメリットしかないと断言できる。

① 時間割が複雑になる

Aクラスを教員Xが、Bクラスを教員Yが担当すると、この2人の時間割は、この展開授業にかんしては全く同じになる。時間割編成時に、一方を動かすときには他方も動かなければならない。

しかしながら、2人とも他の授業も担当するはずであるから、この展開授業を避けたコマにそれら他の授業を配当する必要がある。もっとも、その他の授業が単独ならよいが、教員XやYがまた別の教員と組んで同時展開授業を行う場合は、時間割編成上のネックとなる。

② 教員の力量差

同時展開授業といえど、定期考査問題は共通でなければならないから、教科書など使用される教材も同じになる。しかし教える人間は同じにならないから、どうしても違いは生じうる。

前任校の場合、Aクラスを専任教員(または常勤講師)、Bクラス以下を非常勤講師に担当させることがほぼ常であった。定期考査の作問をするのはAクラスの担当者であった。しかし前任校の非常勤講師は年度ごとに入退職が激しく、 力量も一定ではなかった(強いて言えば、低いほうに一定であった)。にもかかわらず、授業内容にかんする打ち合わせを疎かにしていたので、結局試験問題では和訳など、在り来たりなことしか問えなくなってしまっていた。

専任教員や常勤講師のほうが非常勤講師よりも教える力量が高い、と言いたいわけでは絶対にない――今にして思えば、専任も常勤も非常勤も、どいつもこいつも教えかたは下手であった。非常勤講師のみならず、そもそも教員の出入りが激しいので、教員が育たないという慢性的構造的な問題も抱えていた。

面白かったのは、1年間だけいた、ある非常勤講師が特進系下位クラスを担当していたときのことである。彼はAクラス担当者の作問を分析したうえで、自分たちの生徒たちに教科書の暗唱・暗書を徹底させた。するとそのクラスにいる生徒たちが定期考査で高得点を取り、定期考査ごとのクラス替えでどんどん上位クラスに上がっていったのである。

「教科書の暗記のような単純なこともできないなら、君たちは特進を名乗る資格がない。今すぐやめなさい」と常々言っていたという。若かりし拙は彼から多大なる影響を受けている。

③ クラスを等分割する愚

錦城学園高校では、英語や数学の授業で同時展開授業を行っているが、2クラスを3分割する少人数制を行っているという。これなら、単純に三等分しても、1クラスの人数が少なくなるので、担当教員の目も行き届きやすくなる。

前任校では高1のときのみ少人数制であるが、高2以降は単純な等分割展開である。つまり、単に英語の成績で序列化しているにすぎない。

 

(2)に続く