前任校の話 (関東地方某所) (2)

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いらすとやより拝借

(1)の続きである

先日、某教材出版社のとあるセミナーに参加したら、元同僚と再会した。ほぼ4年ぶりである。

前任校は一応中高一貫校であるが、中学の規模は非常に小さいので、受験業界での扱われ方は高校単独校である。

習熟度別同時展開授業の愚

彼と話していて、前任校ではいわゆる「コミュニケーション英語」(他校では「リーディング」などとも呼ばれるであろう)の時間に習熟度別同時展開授業を行っていたことを思い出した。

前任校におけるその同時展開授業とは、例えば2クラスを成績で輪切りにし、点数のいいほうをAクラス、悪いほうをBクラスと分けるのである(2クラス2展開)。同校は学力別のコースを複数有していたから、同時展開が行われるのは精々3クラスであった。

いま現任校で教えてみて、この同時展開授業はデメリットしかないと断言できる。 

同時展開授業はやめたほうがいい

前任校では週4~5単位の「コミュニケーション英語」(以下、コミュ英)のほか、週2~3単位のいわゆる「ライティング」(以下、W科目)の授業を行っていた。

コミュ英を5単位、W科目を3単位とすると、仮に1コース2クラスならば、5×2=10コマ、3×2=6コマ、計16コマとなり、1人の専任教員でそのコースを担当することができる。3クラスならば、コミュ英を5×3=15、W科目3×1=3、計18コマとなる。残りのW科目には非常勤講師を充てればよい。

W科目についても、それを単独科目と見なすのではなく、コミュ英の進度に合わせた補習科目とする。コミュ英で用いている(検定)教科書で学ぶ文法事項の習熟に費やす。このほうが生徒たちの学習効果も上がるはずだ。

何よりも、1学年の1コースのなかであまりに多くの教員がかかわる「タコ壺化」が避けられる。1人の教員が担当する授業数も減らせる。あの学校がなぜこういった、生徒の学習効果や教員の負担軽減を全く考慮に入れないのか、本当に不思議である。

放課後講習の無意味

また、未だに7~8限に課外だが強制の講習を行っているという。国数英で週1回ずつである。8限だと終了するのは午後5時35分である。生徒の自習の時間を奪っているし、また教員に長時間労働を強いてもいる

この放課後講習は完全に平時の授業からは切り離され、定期考査には出題されない。そもそも、定期考査1週間前には行われない。さながら、校内塾のようなプログラムである。

元同僚に改めて、この放課後講習をなぜやっているのか尋ねたところ「保護者が安心するから」だという。学校で勉強の面倒を見てくれるし、子どもたちは放課後にアルバイトや夜遊びなどをする気も持たずに済むからだという。

ならば、家庭学習をしたくなるような工夫を平時の授業に盛り込めばよいのではないか。中学生とか、高校1年生くらいであれば授業の復習を放課後に徹底して行わせるような課題を指示すればよい。

拙は生徒たちの教科書の暗書や暗唱のテストを課しているので、その練習を指示する。また、教科書準拠のワークブックを提出させたりもする。逆に、授業の予習は一切要求しない

もっとも、具体的に指示をしたところで、やらない生徒は当然現れる――というか、拙が現在担当している中学生にかんしていえば、やらない生徒のほうが多いように見える。だがそれは本人と家庭の問題なので、知ったところではない。合格や提出ができるまで居残りをさせることもままあり、それで安心する保護者もいるようだが。

3分の1が特待生で授業料免除

上位コースや部活動で活躍が期待できる生徒を特待生として入学させるが、全入学者の約3分の1を授業料の全額か半額かを免除しているという。その分は下位コースの生徒から吸い上げているということになる。

当然、収入の少なさは経営を圧迫するであろう。その結果、教職員の給与が少なくなり、常勤講師の場合、賞与は年で3.5か月分しか出ない。若手が長く勤めたいとは思わなくなるのも無理はない。

優秀な生徒が入学しなくなった

特待生で高い学力の生徒をかき集めようとしているにもかかわらず、地域1番手または1.5番手の公立校を落ちた受験生が、前任校に入学する人数は減ってきたという。

その理由は分析には値するが、今のところ図りがたい。前任校が進学に力を入れたいのか、それとも部活動に力を入れたいのか、二兎を得ようとしていてはっきりしないから、優秀層が敬遠しているのかもしれない。

移籍を試みる元同僚

この同僚も、進学実績も待遇ももっと高い学校へと移籍しようとしているという。