国際学院

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埼玉県北足立郡伊奈町に所在する中高一貫校伊奈町は(隣接してはいないが)さいたま市の北、上尾市の東にある。

先に待遇から紹介する。

【学部新卒】月額201,662円(職能給170,900円+教職調整手当30,762円)

【院新卒】月額217,592円(職能給184,400円+教職調整手当33,192円)

賞与は月額分で計算するのか。まさか職能給だけで計算しはしまいか。

苦戦する中学募集

前身は1988(昭和63)年創立の国際学院伊奈高等専修学校である。1998(平成10)年に高等学校へと改組し、現校名に。2013(平成25)年に中学校を開校した。 

高校の設立からまだ19年、前身の時代を含めてもまだ29年という、比較的新しい学校である。

中学入学生は今年(2017年)度で5期生である。入学(在籍)者数の推移を見てみよう。比較のため、昌平中学(埼玉県杉戸町)と開智未来中学(埼玉県加須市)における入学者数の推移と一緒に見てみよう。昌平や開智未来と比較するのは、それらの通学圏がJR宇都宮線の大宮駅以北で本校のそれと重なりそうだからである。

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断っておくが、本校のデータについては在籍者数しか発見することができなかった。しかし本稿の分析にとっては、在籍者数だけでも十分事足りるであろう。本校中学への入学者数が明らかに少ないことは、恐らく間違いない。募集要項によれば中学1学年の定員は80人だそうだ。

初めて昌平中学1期生が43人と知ったとき、相当少ないと思ったものだが、本校と比較すると健闘したことがわかる(昌平中学にかんする分析は過去記事を参照)。 また開智未来は本家の「開智ブランド」をフル活用したと言える。

昌平にしても開智未来にしても、これらの学校が中学生徒募集において成功していると見なすのであれば、それは需要があったからであろう。昌平と開智未来とは通学圏が相当程度競合しているが、いずれにしても埼玉県東部ないし北東部、そして群馬県南東部や茨城県南西部に、私立中学への需要を掘り起こせたことが、成功の理由と言える。

また両校とも東大をはじめとする難関大学、有名大学への進学実績を(中高一貫生のみならず高入生のものも含めて)毎年積み上げてきている。私立中学への進学を希望する家庭は、子どもをより難関でより有名な大学へと進学させたいのである。

大学合格実績の低さ=中学ブランド力の低さ

翻って本校はどうか。はっきり言って見るべきところはない。

(恐らく卒業年度の)平成26~28年度の複数年度合算の実績ですら国公立大学で筑波大1、東京農工大1、群馬大1、茨城大1、埼玉県立大2という程度。私立大に目を向ければ、早大1、慶大1、東京理科大2、学習院2、明治3、青学1、立教2、中央3、法政2、立命館2…(コチラを参照)。

ついでに言えば、上記の筑波大、茨城大、埼玉県立大への合格は平成26年度のもののようだが、本校が速報を出しているのが平成26年12月11日なので、いずれも間違いなく一般受験による合格ではなく、推薦かそれに類する入試によるものである

余談だが、筑波大の体育学群はスポーツによる推薦入試を行っているので、この大学への合格実績が学力によるものかそうでないのかは、合格学群まで見ないと判断できない。

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立地の問題

本校へのアクセスはJR宇都宮線蓮田駅またはJR高崎線上尾駅からシャトルバスを利用する。蓮田または上尾以北からの通学者はこのバスを利用するであろう。通学に大宮駅を経由する者は、同駅でニューシャトルに乗り換え、志久駅で下車して徒歩で通ってくるであろう。

本校は伊奈町に立地するのであるが、距離的にはさいたま市にほど近く、栄東や埼玉栄は比較的近い。さらに県立の中高一貫校、伊奈学園も同町内に立地し、競争を強いられているはずだ。

大学合格実績から言えば栄東、せめて埼玉栄だろうし、コスト面を考慮すれば公立の伊奈学園を選ばない手はない。伊奈学園は大学合格実績も本校よりははるかによい(コチラを参照)。

何で中学作ったの

はっきり言って、どのような勝算があって本校は中学を設置したのか、全く理解できない。

さらに、生徒数が少なすぎるので、このような環境では中学生が人間関係を築く訓練をうまく行うことができるとも思えない。生活指導上の問題も生じうるのではないか。

次のように語る塾経営者がいる。

● 埼玉県内の私立中学校について。2013年4月に4校スタート。武南中、狭山ヶ丘中、東京成徳深谷中、国際学院中。埼玉県内の私立中学校は、全29校となる。中学校を持っている私立高校が6割くらい。栄東(平成4年開校)、開智(平成9年開校)が好調なので、物事はリスクがあったとしても、他人に先んじてやるべきなんだなと思った。

 

「埼玉高校入試情報フォーラム2013」レポ(1) - ブログ・アビット

強調は引用者。

文華女子の例が示すように、生徒数が少なくて中学校での生徒募集をやめる学校もある。本校も早晩そうならないことを祈るばかりである。