東京都北区に所在する中高一貫校。前回の聖学院に引き続き、期せずして北区の学校が連続している。
本校は学校法人武蔵野学院が運営し、系列に武蔵野学院大学(埼玉県狭山市)がある。くれぐれも、学校法人武蔵野大学が運営する武蔵野大学(東京都江東区)および武蔵野女子学院中高(東京都西東京市)と混同しないように。
学校法人:武蔵野学院-大学:武蔵野学院大学-中高:武蔵野(本校)
学校法人:武蔵野大学-大学:武蔵野大学-中高:武蔵野女子学院
間違えるなというほうが無理だろ。
給与
学部卒初任給の基本給184,000円、手当36,000円、計220,000円は安い。基本給のみ22万円でようやく世間並みといったところではないか。
賞与の年2.8か月分も安いが、初年度1.5か月分に更に驚かされる。
初年度
220,000(円)×12(か月)+184,000(円/基本給)×1.5(か月)=2,916,000(円)
2年目以降(月額は仮の値)
220,000(円)×12(か月)+184,000(円/基本給)×2.8(か月)=3,155,200(円)
拙も行く先々で、その都道府県で1、2を争う給料の安いと言われる(同僚がそう自称する)学校に勤めてきたが、下には下がいるものである。しかも、業界内では給料が比較的よいと言われる東京都内、しかも23区内においてである。
賞与の出しかたからも察するに、基本給の上がりかたもよさそうには思えない。
カリキュラムと進学実績
本校ウェブサイトによれば中学3年間は英語の授業が週10時間あるという。ネイティヴ教員が6時間、日本人教員が4時間教えるそうだ。その分英語以外の主要教科が割りを食い、週3ないし4時間しか教えられない(コチラを参照)。これは明らかにバランスを欠いている。
当然ながら授業はオールイングリッシュ。生徒たちは毎日英語のシャワーを浴びることになるます。しかし、ただ聞くだけではありません。授業の進め方はグループワークやディスカッション、そしてプレゼンテーションが中心となっていて、生徒たちが「英語を話す」ことで初めて成立する形になっています。
本当に、日本語話者の中学生たちがグループワークをするときも作業言語は英語のみなのだろうか。そんなわけはないと、英語の教員として断言しておく。きっと日本語を介在させてしまうだろう。
(敢えて付記しておく:日本人の英語教師はオールイングリッシュの授業を目指すべきだが、それにこだわりすぎないほうがいい。ある程度は母語の使用を認めておいたほうが、英語の得意ではない生徒たちにたいしてはとりわけ、英語の授業への参加の心理的ハードルが下がるからである。少なくも中学生のグループワークでは日本語を使ってもよいと考える。プレゼンテーションで英語を話せるように準備できればよい)
もちろんこういう授業は非常に価値があると思うが、週6時間もやっても、効果は極めて限定的であると言わざるを得ない。ネイティヴに授業をやらせて、英語のシャワーを浴びせつければ中学生は英語が勝手にできるようになる、なんていうのは英語教育の素人が抱きがちな幻想だ。
英語の週10時間を含めた中学生の週あたりの授業時数は36時間。土曜日に4時間授業があったとしても平日はほぼ毎日7時間授業になるのではないか。これでどうして家庭学習の時間がとれようか。
他教科を犠牲にして英語の授業を充実させたいのだろうか、これでは英語力も、それ以外の全般的な学力も、向上するとは思えない。
そのくせ高校に上がると、週の授業時数は33ないし32時間となり、中学より減るという逆転現象が起こる(コチラを参照)。本当に考えてカリキュラムを作っているのか。
JS日本の学校によれば、2017年度大学入試における本校の実績は国立の新潟大1、私立の立教2、法政2あたりが、健闘したと言えるくらいか。はっきり言って見るべきところはない。
生徒の学力が伸びず、進学実績が向上しないその最大の理由は、本校のあてずっぽうなカリキュラムにあると考えられる。加えて給料が安いので、いい教員は集まらないし、またすぐに辞めてしまうだろう。いい教員がいないと、生徒の学力も進学実績も上がらない。恐らくこれが、予想される本校の現状ではなかろうか。