浦和ルーテル学院:青学大の系属校に

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学校法人浦和ルーテル学院さいたま市緑区)と学校法人青山学院は協定を結び、来年(2019年)度より浦和ルーテル学院小・中・高が青山学院大学の「系属校」となることが決まった。ルーテル学院は、2030年度以降に同高校を卒業する生徒は希望すれば全員が青学大に入学することを目指すという。

埼玉県内の受験勢力図は変わるか

浦和ルーテル学院は、正直、地味な学校である。

拙は同学院に地理的に比較的近い学校で働いていたが、開智や埼玉栄、栄東(いずれもさいたま市)が話題に上ることはあっても、同学院が話題になることは、全くと言ってもいいほど、なかった。

その地味さは、恐らく(1)キリスト教系学校に共通する、華美さを避ける傾向(2)全校生徒が小中高合わせても720人と小規模である(3)進学実績も部活動実績もイマイチ、の3点に由来すると考えられる。

同学院は2015年1月にさいたま市浦和区駒場の狭小であった旧校地から比較的広い現在地へと移転しているが、恐らく生徒数の拡大をも目論んでのことではなかったか。青学大の系属校化も同様に、それによって受験者数や入学者数の確保が期待できるからに違いない。

埼玉県内、特に東京都区部に近い南部では(1)大学進学実績の点で抜きん出ている学校(開智や栄東など)(2)有名私大の系列校(慶応志木立教新座、また県北部にある本庄早稲田)はいくらか経営・運営は安泰だろう。このほど浦和ルーテル学院はひとまず(2)のグループに入り、安定して青学大への進学者数を一定数確保すれば、まあ安泰である。しかしこれら2グループのどちらにも属さない学校は、同学院が「いち抜け」したことに危機感を覚えているはずである。

青学大は系属校を増やしている

青学大は2016年に横浜英和女学院中高(現・青山学院横浜英和中高)を系属校にしている。それ以前は青山学院中高が系列にあるだけであった。

もっとも、横浜英和にしても、今回の浦和ルーテル学院にしても、入学者の学力は決して高くはないと思うのだが、そういう生徒を大学に全入させてもよいのだろうか。それとも、浦和ルーテル学院にかんして言えば、2030年度までに高い学力の生徒が集まる学校に変わることを期待しているのだろうか。

このような、系列校を増やすことによる入学者の青田買い、つまり「附属生・系属生のエスカレーター」を一般受験生は嫌う傾向がある。但し、そもそも各大学ともその「一般入試」の枠が小さくなっていくようなので、一般受験入学生のほうがマイノリティになっていくのかもしれないが。

校名に違い

ところで、横浜英和女学院が「青山学院横浜英和」に校名変更したのにたいし、浦和ルーテル学院は「青山学院大学系属浦和ルーテル学院」へと校名変更する。

その違いは何か、そもそも長い名前がますます長ったらしくなるなと思ったのだが、恐らく理由は、残す名前が「学院」を含んでいるからだろう。まあ早晩「青学浦和」とでも略されて呼ばれるようになるだろう。

 

(7月28日(土)追記インターエデュに次のような投稿を発見した。

うーん、

ルーテル学院ルター派

青山学院はメソジスト派ですよね…

ちょっと節操がない感じがしますね。 なんでもありの日本だとそんなに気にならないのかしら。

少人数とはいえ、人が集まらないから起死回生の策なんでしょうけど。

キリスト教系の学校が求人をする場合には、採用の条件として「本校のキリスト教教育に理解がある者」という但し書きが付けるのが常である。その割には、青山学院とルーテル学院は宗派を無視するという無節操をいとも容易く冒すわけである。

ちなみに、横浜英和はメソジスト派に属すようだ(コチラを参照)。

茂原北陵高

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千葉県茂原市に所在する共学校。

1899年に長生裁縫女学校として開校。1937年、千葉県長生家政高等女学校。1947年、学制改革に伴い千葉県長生家政高等学校に改組。1964年、長生女子高等学校。1965年の普通科男女共学化を経て、1967年に千葉県長南高等学校。1994年に現校名となる。なお現在でも家政科は女子のみの募集である。

千葉県の東側、おおよそ「ちーばくん」の後頭部から延髄のあたりの地域には、元々は100年以上前に創立し、女子のみに技芸教育を施していた私立学校が少なくない(例えば、敬愛大学八日市場高校なども)。

そういう学校は早々に共学化したり、普通科を設置したりしてきているけれども、得てして、生徒募集には苦労している傾向がありそうだ。地元の家庭教師業者の証言によれば、周辺地域の中学生には本校の人気がないという。

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茂原市の受験動向・対応エリア|家庭教師のリーズ|千葉県|家庭教師|チイコミ

21世紀のご時世、実業系学科は不人気なので普通科に注力するのは止むを得ない。とはいえ、同じような経緯を辿ってきた近隣の学校も同じように普通科重点策をとっているので、ひとつ普通科の中でも、どのように独自色を出していくのかが肝要だ。

朝7:35から「公務員講座」

普通科普通コースでは毎週火曜と木曜の朝7:35~8:15の0時間目に「公務員講座」を実施している。「公務員講座」と銘打たれているけれども、使われ方としては補習目的のようだ。

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「公務員講座」ではあるが、開講時間からして外部の講師が教えているはずはなく、本校の教員が担当しているのであろう。普通科特別進学コースでは週3日、7時間目に補習授業をしているが、普通コースの「公務員講座」も7時間目に行わないのは、生徒たちの部活動の時間を妨げないようにするためと、教員配置をやりやすくするためであろう

本校では部活動は生徒たちへの生活指導、進路指導において重要な役割を果たしていることが窺える。また極力少ない教員数で多くのコマ数を稼働させる施策が為されていることも予想される。

埼玉栄について書いたときにも述べたが、0限やら、7、8限やら、朝早くとか夕方または夜遅くに授業がある学校ははっきり言ってブラックだ。そういえばこの求人票には勤務時間が明記されていない。その事実だけでも、本校がブラックであることを匂わせる…。

待遇について

学部新卒で月額215,200円は普通だ。賞与は年2回だが、何か月分かは不明である。

岡山龍谷高

もはや備忘録である。

またしても、登録している私学教員求人募集サイトからメールが来た。曰く、岡山龍谷高(岡山県笠岡市)より非公開の人材探しを依頼されたという。

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拙は東日本出身、在住なので、西日本、それも中四国や九州、沖縄地方の学校には疎い。本校名も初めて聞いた。

この業者を通じて非公開の常勤講師や専任教員の求人を出してくる学校に共通しているのは、待遇を提示してこないことだ。当サイトが先日示した千葉黎明高(千葉県八街市)や愛光愛媛県松山市)と同様である。

各学校にしてもこの業者にしても、何をウリにして求人したいのかわからない。たかがメール1通、と思うかもしれないが、ほんの僅かであってもリソースの無駄――拙が当サイトを運営していなければ、このメールを開くことすら拙にとって益がなく無意味――であるから、やらなきゃいいのに、と思う。

ついでに言えば、これもその業者を通じた非公開求人募集をする学校に共通していることなのであるが、本校は自前のウェブサイト上でも堂々と教員募集をしている。となると、ますますこの業者を介した「非公開の」求人募集の意義が不明瞭になってくる。

龍谷総合学園に加盟

本校は龍谷総合学園に加盟している。京都の「西本願寺」として知られる龍谷山(りゅうこくざん)本願寺系列の学校法人によって形成される学校グループである。ウィキペディアには「実質的には龍谷大学を頂点とする一大組織」とある。

龍谷大学について、手元の『大学図鑑!2009』には「関西圏では知名度の高い伝統校だが、全国的には無名」(p.341)とある。これには完全に同意する。

大学受験産業界において、同大学は「産近甲龍」として京都産業大近畿大、甲南大とともに一緒くたに括られる。「関関同立」(関西学院大、関西大、同志社大立命館大)に準ずるポジションだが、関東圏で言うと「日東駒専」に相当するようだ。前掲の『大学図鑑!2009』によれば同大学は「日東駒専だと東洋か駒沢のポジション」(p.343)だという。

龍谷総合学園は日本全国に中高校を抱えているが、その頂点が「日東駒専」レヴェルで、しかも知名度ではそれらに遥かに劣るようでは、スケールメリットを活かし切れていない気がする。

傘下には他にも武蔵野大(東京都江東区)、岐阜聖徳学園大(岐阜県岐阜市)、京都女子大(京都府京都市)、相愛大(大阪府大阪市)、兵庫大(兵庫県加古川市)、筑紫女学園大(福岡県太宰府市)があるが、いずれも全国的な知名度の点ではイマイチだし、西日本に偏在していることも気になる。

進学実績はイマイチ

では本校がこれらの系列大学にどれほどの生徒を送っているかというと、確認できる限り、龍谷大11人、京都女子大3人のみのようだ。本校の生徒たちは系列の大学にプライオリティを感じていないか、本校がこれらの大学が要求する学力を生徒たちに身につけさせていないか、のどちらかである。

それ以外の進学実績を見ても、東日本の教員がわざわざ着任したいと思うような学校ではない。

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進路より取得。

専修大学松戸

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千葉県松戸市に所在する中高一貫校。しばしば「専松」と呼ばれる。

校名に「専修大学」と冠していることからわかるように専修大学の系列校ではあるが、運営は「学校法人専修大学松戸高等学校」によるもので、同大学を運営する「学校法人専修大学」とは別である。実際のところ、同大学への進学者数は各学年1割程度のようだ。

待遇を計算してみました

常勤講師は45分の1コマ2650円以上だという。これを最低値として、週の持ちコマ14ないし16コマで計算する。更に「専任講師手当」の月40000円も合算する。

【月額】

14コマ:(2650×14(コマ))×4(週)+40000=188400(円)

16コマ:(2650×16(コマ))×4(週)+40000=209600(円)

14コマの約19万円にしても、16コマの21万円にしても、これらは学部卒の初任給だとしても安い。

賞与は4.23か月として年額も計算する。

【年額】

14コマ:188400×(12+4.23(か月))=3057732(円)

16コマ:209600×(12+4.23(か月))=3401808(円)

着任初年度から賞与を満額もらえるのであれば、他校の学部卒初年度並みの水準になるとは言えるかもしれないが、決して恵まれた待遇とは評価できない。

なぜか総武線沿線の生徒が多い

1959年に高校として創立、2000年に中学校を設置した。

2017年度大学入試における合格実績を見ると、北大2名、筑波大9名、千葉大14名をはじめとして、国公立大学には計58名が合格している。熊本大では浪人だが医学部医学科に合格している(インターエデュを参照)。東大京大にこそ合格者は出ていないが、これはまずまずと言ってよいか。

本校はJR常磐線北松戸駅、または新京成線松戸新田駅を最寄駅としているが、中学においてはなぜかJR総武線沿線の生徒が多く、常磐線沿線の生徒は相対的に少ないという。

それは、こちらのページ曰く「総武線沿線には専松レベルの私立中がない」からだという。

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総武線を東京方面に乗っていったとしても、山手線(秋葉原駅)に辿り着くまでに専松と張り合えそうな私立中学は、恐らくない。

中学設置の時期やタイミングの重要性

引用元のデータが挙げる中学校の設置年を見ると、市川1948年、東邦大東邦1961年、昭和秀英1985年、渋谷幕張が1986年と平成以前に設置されている。それにたいし芝浦工大柏1999年、本校2000年と設置年が下ることに、合格偏差値帯も下がる。

昭和秀英渋谷幕張の例を見れば、早く作ればいいというものではないが、それでも長く事業を継続しているという事実は受験生の信頼を得られる、ということの証左である。

また本校(や芝浦工大柏)が中学を設置するタイミングはギリギリであったかもしれない。それ以上後になると、更に東京周辺で私立中学が雨後の筍の如くニョキニョキと増えていったからである。

本校がどの程度まで戦略的に考えていたかはわからないが、生徒募集にかんしては奇妙にもうまい立ち位置にあるように見える。

国際学院

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埼玉県北足立郡伊奈町に所在する中高一貫校伊奈町は(隣接してはいないが)さいたま市の北、上尾市の東にある。

先に待遇から紹介する。

【学部新卒】月額201,662円(職能給170,900円+教職調整手当30,762円)

【院新卒】月額217,592円(職能給184,400円+教職調整手当33,192円)

賞与は月額分で計算するのか。まさか職能給だけで計算しはしまいか。

苦戦する中学募集

前身は1988(昭和63)年創立の国際学院伊奈高等専修学校である。1998(平成10)年に高等学校へと改組し、現校名に。2013(平成25)年に中学校を開校した。 

高校の設立からまだ19年、前身の時代を含めてもまだ29年という、比較的新しい学校である。

中学入学生は今年(2017年)度で5期生である。入学(在籍)者数の推移を見てみよう。比較のため、昌平中学(埼玉県杉戸町)と開智未来中学(埼玉県加須市)における入学者数の推移と一緒に見てみよう。昌平や開智未来と比較するのは、それらの通学圏がJR宇都宮線の大宮駅以北で本校のそれと重なりそうだからである。

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断っておくが、本校のデータについては在籍者数しか発見することができなかった。しかし本稿の分析にとっては、在籍者数だけでも十分事足りるであろう。本校中学への入学者数が明らかに少ないことは、恐らく間違いない。募集要項によれば中学1学年の定員は80人だそうだ。

初めて昌平中学1期生が43人と知ったとき、相当少ないと思ったものだが、本校と比較すると健闘したことがわかる(昌平中学にかんする分析は過去記事を参照)。 また開智未来は本家の「開智ブランド」をフル活用したと言える。

昌平にしても開智未来にしても、これらの学校が中学生徒募集において成功していると見なすのであれば、それは需要があったからであろう。昌平と開智未来とは通学圏が相当程度競合しているが、いずれにしても埼玉県東部ないし北東部、そして群馬県南東部や茨城県南西部に、私立中学への需要を掘り起こせたことが、成功の理由と言える。

また両校とも東大をはじめとする難関大学、有名大学への進学実績を(中高一貫生のみならず高入生のものも含めて)毎年積み上げてきている。私立中学への進学を希望する家庭は、子どもをより難関でより有名な大学へと進学させたいのである。

大学合格実績の低さ=中学ブランド力の低さ

翻って本校はどうか。はっきり言って見るべきところはない。

(恐らく卒業年度の)平成26~28年度の複数年度合算の実績ですら国公立大学で筑波大1、東京農工大1、群馬大1、茨城大1、埼玉県立大2という程度。私立大に目を向ければ、早大1、慶大1、東京理科大2、学習院2、明治3、青学1、立教2、中央3、法政2、立命館2…(コチラを参照)。

ついでに言えば、上記の筑波大、茨城大、埼玉県立大への合格は平成26年度のもののようだが、本校が速報を出しているのが平成26年12月11日なので、いずれも間違いなく一般受験による合格ではなく、推薦かそれに類する入試によるものである

余談だが、筑波大の体育学群はスポーツによる推薦入試を行っているので、この大学への合格実績が学力によるものかそうでないのかは、合格学群まで見ないと判断できない。

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立地の問題

本校へのアクセスはJR宇都宮線蓮田駅またはJR高崎線上尾駅からシャトルバスを利用する。蓮田または上尾以北からの通学者はこのバスを利用するであろう。通学に大宮駅を経由する者は、同駅でニューシャトルに乗り換え、志久駅で下車して徒歩で通ってくるであろう。

本校は伊奈町に立地するのであるが、距離的にはさいたま市にほど近く、栄東や埼玉栄は比較的近い。さらに県立の中高一貫校、伊奈学園も同町内に立地し、競争を強いられているはずだ。

大学合格実績から言えば栄東、せめて埼玉栄だろうし、コスト面を考慮すれば公立の伊奈学園を選ばない手はない。伊奈学園は大学合格実績も本校よりははるかによい(コチラを参照)。

何で中学作ったの

はっきり言って、どのような勝算があって本校は中学を設置したのか、全く理解できない。

さらに、生徒数が少なすぎるので、このような環境では中学生が人間関係を築く訓練をうまく行うことができるとも思えない。生活指導上の問題も生じうるのではないか。

次のように語る塾経営者がいる。

● 埼玉県内の私立中学校について。2013年4月に4校スタート。武南中、狭山ヶ丘中、東京成徳深谷中、国際学院中。埼玉県内の私立中学校は、全29校となる。中学校を持っている私立高校が6割くらい。栄東(平成4年開校)、開智(平成9年開校)が好調なので、物事はリスクがあったとしても、他人に先んじてやるべきなんだなと思った。

 

「埼玉高校入試情報フォーラム2013」レポ(1) - ブログ・アビット

強調は引用者。

文華女子の例が示すように、生徒数が少なくて中学校での生徒募集をやめる学校もある。本校も早晩そうならないことを祈るばかりである。

昼間定時制とは (1) : 中央大学高校

東京都文京区に所在する共学高校。その名の通り中央大学の附属校であり、系列には中央大学附属(東京都小金井市)、中央大学杉並高校(東京都杉並区)、中央大学附属横浜(神奈川県横浜市)がある。

校舎を同大後楽園キャンパス内に構え、同大理工学部とは一部の施設を供用している。また代々の校長は同学部の教員が務めている。

東京都心のど真ん中で立地は極めてよく、鉄道各駅からのアクセスも良好である。それゆえに校舎は狭小で、同校は全日制ではなく昼間定時制である。

昼間定時制の高校

前身は1928(昭和3)年創立の中央大学商業学校で、元々は夜間定時制であった。1948(昭和23)年に現校名へと改称。1993年(平成5)より昼間定時制へと移行した。

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同校が定時制高校と分類されるのは、施設面で全日制課程の設置基準を満たしていないからだという。高校の設置基準について詳しくないが、体育の実技科目が実施できる体育館や校庭を持っていないことが、全日制課程に入れない理由のようだ。実際、同大のウェブサイトを見ても、そもそも後楽園キャンパスが狭小であることがわかる。

始業が一般的な高校よりも遅いことが同校の特色の1つとして語られることがあり、9時20分までに登校してショートホームルーム(SHR)、のち9時30分より1限開始となる。これにより遠方からも通学しやすいという評価もあるようだ。 

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但し、昼間定時制だから始業を遅くすることができると説明するページを見たことがあるが、それは恐らく真実ではない。拙の前任校は8時55分に1限開始であったが、現任校は8時40分に1限開始である。共に全日制である。始業時間(厳密に言えば、1限開始時刻)は学校の裁量で決定できるのは間違いない。

もっとも、昼間定時制高校が始業時間を遅めに設定する傾向にあるのは事実で、例えば科学技術学園高校(東京都世田谷区)は9時10分1限開始である。

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昼間定時制と全日制の違い?

本校自身が「授業、特別活動などにおいては全日制と変わることはありません」と語るように、校舎が狭小で体育設備がないというデメリットを除けば、昼間定時制と全日制との違いは全くないように思われる。

本校は中大の附属校であり、立地の良さも相まって、高校入試においては人気がある。2018年度の(合格?)偏差値を71とするところもある。つまり本校には「勉強のできる・学業成績のよい」中学生が集まるのであり、そもそもスポーツのために高校に進学する類の受験生は寄っては来ない。ゆえに充実したスポーツ設備はなくても大したマイナスにはならないのではないか。

もっとも、このように高学力の生徒が集まる昼間定時制高校は本校以外には恐らく存在しないであろう。

愛光

またしても、登録している私学教員求人募集サイトからメールが来た。

この業者に登録して数年経つが、このような非公開求人の紹介メールが届くようになったのは、今年が初めてだ。なぜだ?

四国・愛媛県の学校

ところで、曰く、愛光(愛媛県松山市)より非公開の人材探しを依頼されたという。

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本校は1956年創立のキリスト教中高一貫校である。当初は男子校であったが、2002年より共学化している。男子生徒のみ利用できる寮を設置している。

2017年度大学入試の合格実績は、東大22(15)人で全国24位、京大7(5)人などである(カッコ内の数字は、現役合格者の内数)。1学年のヴォリュームが250人程度らしいので、進学校としてはなかなかの成果である。灘(神戸市)、ラ・サール鹿児島市)と並んで「西の御三家」と呼ばれていたらしい(?)ことも頷ける。

教員が職場を選ぶ根拠(1)立地・待遇

話を求人メールに戻す。

メールそれ自体は業者が出しているはずなので、宛先については学校は関知していないと思われる。とすれば、なぜこの業者は、関東圏に住んでおり、愛媛県にも四国にもゆかりのない人間(拙のことである)がそちらに移住してまで転職しようとする、と考えたのだろうか。

(ただし私立校の教員でも、日本全国を飛び回って転職する者は、決して多くはないが、いる。前任校にそういう同僚が多く、その理由を聞いたことはなかったが、恐らく直接ヘッドハントされたのだろうと思われる)

しかも現在、同校はそのウェブサイト上でほぼ同じ条件と思われる英語科の採用情報を公開しているので、 同校が英語科の教員を探していることは、はっきり言って非公開でも何でもないのではないか。

さらに、その業者からのメールにおいても、同校自身のウェブサイトにおいても、待遇が明記されていない。まずカネの話をしろよ。特に遠方から人材を引っ張りたいのであれば、給与を含めた待遇にモノを言わせるほかはない。

教員が職場を選ぶ根拠(2)大学合格実績

待遇以外で教員が勤務先に魅力を感じるとしたら、知名度である。

基本的に私立(中)高校の知名度は、部活動(特に野球)か大学合格(特に東大)の実績に大きく左右される。教科指導の面で優れた教員ならば、学習に高い意欲を示し、かつ学習能力の高い生徒がたくさんいる学校、つまり大学合格実績のよい学校で教えたいと思うはずである。

もっとも、上に挙げた程度の合格実績ならば、関東圏から四国に移住してまで転職したいとは思わない。2017年度大学入試においてラ・サールは東大に40(28)人合格しているが、それでも鹿児島に行きたいとは思わない。灘なら、移住の労を賭しても教えてみたい(が、男子校なんだよナァ。ラ・サールもだけど)。