昼間定時制とは (1) : 中央大学高校

東京都文京区に所在する共学高校。その名の通り中央大学の附属校であり、系列には中央大学附属(東京都小金井市)、中央大学杉並高校(東京都杉並区)、中央大学附属横浜(神奈川県横浜市)がある。

校舎を同大後楽園キャンパス内に構え、同大理工学部とは一部の施設を供用している。また代々の校長は同学部の教員が務めている。

東京都心のど真ん中で立地は極めてよく、鉄道各駅からのアクセスも良好である。それゆえに校舎は狭小で、同校は全日制ではなく昼間定時制である。

昼間定時制の高校

前身は1928(昭和3)年創立の中央大学商業学校で、元々は夜間定時制であった。1948(昭和23)年に現校名へと改称。1993年(平成5)より昼間定時制へと移行した。

f:id:RYUSUKE:20171103114918p:plain

同校が定時制高校と分類されるのは、施設面で全日制課程の設置基準を満たしていないからだという。高校の設置基準について詳しくないが、体育の実技科目が実施できる体育館や校庭を持っていないことが、全日制課程に入れない理由のようだ。実際、同大のウェブサイトを見ても、そもそも後楽園キャンパスが狭小であることがわかる。

始業が一般的な高校よりも遅いことが同校の特色の1つとして語られることがあり、9時20分までに登校してショートホームルーム(SHR)、のち9時30分より1限開始となる。これにより遠方からも通学しやすいという評価もあるようだ。 

f:id:RYUSUKE:20171103122426p:plain

但し、昼間定時制だから始業を遅くすることができると説明するページを見たことがあるが、それは恐らく真実ではない。拙の前任校は8時55分に1限開始であったが、現任校は8時40分に1限開始である。共に全日制である。始業時間(厳密に言えば、1限開始時刻)は学校の裁量で決定できるのは間違いない。

もっとも、昼間定時制高校が始業時間を遅めに設定する傾向にあるのは事実で、例えば科学技術学園高校(東京都世田谷区)は9時10分1限開始である。

f:id:RYUSUKE:20171103123945p:plain

昼間定時制と全日制の違い?

本校自身が「授業、特別活動などにおいては全日制と変わることはありません」と語るように、校舎が狭小で体育設備がないというデメリットを除けば、昼間定時制と全日制との違いは全くないように思われる。

本校は中大の附属校であり、立地の良さも相まって、高校入試においては人気がある。2018年度の(合格?)偏差値を71とするところもある。つまり本校には「勉強のできる・学業成績のよい」中学生が集まるのであり、そもそもスポーツのために高校に進学する類の受験生は寄っては来ない。ゆえに充実したスポーツ設備はなくても大したマイナスにはならないのではないか。

もっとも、このように高学力の生徒が集まる昼間定時制高校は本校以外には恐らく存在しないであろう。

愛光

またしても、登録している私学教員求人募集サイトからメールが来た。

この業者に登録して数年経つが、このような非公開求人の紹介メールが届くようになったのは、今年が初めてだ。なぜだ?

四国・愛媛県の学校

ところで、曰く、愛光(愛媛県松山市)より非公開の人材探しを依頼されたという。

f:id:RYUSUKE:20171026230723p:plain

本校は1956年創立のキリスト教中高一貫校である。当初は男子校であったが、2002年より共学化している。男子生徒のみ利用できる寮を設置している。

2017年度大学入試の合格実績は、東大22(15)人で全国24位、京大7(5)人などである(カッコ内の数字は、現役合格者の内数)。1学年のヴォリュームが250人程度らしいので、進学校としてはなかなかの成果である。灘(神戸市)、ラ・サール鹿児島市)と並んで「西の御三家」と呼ばれていたらしい(?)ことも頷ける。

教員が職場を選ぶ根拠(1)立地・待遇

話を求人メールに戻す。

メールそれ自体は業者が出しているはずなので、宛先については学校は関知していないと思われる。とすれば、なぜこの業者は、関東圏に住んでおり、愛媛県にも四国にもゆかりのない人間(拙のことである)がそちらに移住してまで転職しようとする、と考えたのだろうか。

(ただし私立校の教員でも、日本全国を飛び回って転職する者は、決して多くはないが、いる。前任校にそういう同僚が多く、その理由を聞いたことはなかったが、恐らく直接ヘッドハントされたのだろうと思われる)

しかも現在、同校はそのウェブサイト上でほぼ同じ条件と思われる英語科の採用情報を公開しているので、 同校が英語科の教員を探していることは、はっきり言って非公開でも何でもないのではないか。

さらに、その業者からのメールにおいても、同校自身のウェブサイトにおいても、待遇が明記されていない。まずカネの話をしろよ。特に遠方から人材を引っ張りたいのであれば、給与を含めた待遇にモノを言わせるほかはない。

教員が職場を選ぶ根拠(2)大学合格実績

待遇以外で教員が勤務先に魅力を感じるとしたら、知名度である。

基本的に私立(中)高校の知名度は、部活動(特に野球)か大学合格(特に東大)の実績に大きく左右される。教科指導の面で優れた教員ならば、学習に高い意欲を示し、かつ学習能力の高い生徒がたくさんいる学校、つまり大学合格実績のよい学校で教えたいと思うはずである。

もっとも、上に挙げた程度の合格実績ならば、関東圏から四国に移住してまで転職したいとは思わない。2017年度大学入試においてラ・サールは東大に40(28)人合格しているが、それでも鹿児島に行きたいとは思わない。灘なら、移住の労を賭しても教えてみたい(が、男子校なんだよナァ。ラ・サールもだけど)。

江戸川学園取手 (2)

f:id:RYUSUKE:20171022101008p:plain

茨城県取手市に所在する中高一貫校。去る9月24日(日)に教員が傷害容疑で逮捕されたことは記憶に新しい。

前回は急募案件を紹介したが、今回はそれとは異なり、通常の募集である。本校が年に複数回、専任教員の募集をすることは珍しくない(今年は2度目であると記憶している)。

待遇では江戸取>江戸女

江戸川学園取手

【専任教諭】

大学(4年):本俸198,000円 諸手当69,240円 合計267,240円

修士(2年):本俸220,300円 諸手当74,254円 合計294,554円

博士(3年):本俸266,700円 諸手当84,306円 合計351,006円

数年前に同じ江戸川学園が運営する江戸川女子(東京都江戸川区)の教員採用試験を受験したことがある。手元にそのときの待遇情報が残っているので、掲載する。

江戸川女子

【専任教諭】

大学(4年):基本給234,000円 住宅手当12,500円 合計247,000円

(賞与:初年度4.02か月分、2年目以降5.55か月分)

学部卒の初任給にかんし、本俸ないし基本給だけで比べると、都区内にある江戸川女子のほうが高いのであるが、諸手当込で見ると、茨城県にある本校のほうが高くなる。

一般的に言えば、私立校の給与は関東一円でも東京都と神奈川県は高いと言われているが、同一法人内のこの2校では逆転現象が起きている。

同じことは非常勤講師の待遇にかんしても言える。

江戸川学園取手

【非常勤講師】

26歳以上:3,400円(1コマ50分換算)

26歳未満:2,900円(1コマ50分換算) 

江戸川女子

【非常勤講師】

3,900円(1コマ65分換算)

江戸川女子は1コマ65分なので、本校の1コマ50分と比較すると、1.3倍授業時間が長いことになる。

けれども江戸川女子の1コマ単価が本校の1.3倍になっているかというと、そうではない。もし江戸川女子の1コマが本校と同じ50分であったなら、3000円である。辛うじて本校の26歳未満非常勤講師よりは高いが、それ以上よりは安い。

江戸川女子のほうが先に設立されており(前身の城東高等家政女学校は1931年創立)、この法人のいわば「本家」であったはずだが、今となっては力関係が逆転していることを窺わせる。

余談~前任校の待遇の劣悪さについて~

全くの余談だが、大学院の修士課程を出たあと、20歳代後半(26歳は過ぎていた)で埼玉県の北のほうで初めて非常勤講師になったとき、1コマ50分の単価は2250円であった(かつてコチラでも当時の待遇について少し言及していた)。

いかにあの学校の待遇が劣悪であったか、怒りよりも、身の毛もよだつおぞましさすら感じている。

当時はそこで専任になりたいとも思ったものだが、結果的にはならなくて全くの正解であった。

千葉黎明高

またしても、登録している私学教員求人募集サイトからメールが来た。

曰く、千葉黎明高校(千葉県八街市)より非公開の人材探しを依頼されたという。

f:id:RYUSUKE:20171020220057p:plain

「民間大手企業出身の校長」

1949年に八街農林学園高校として開校。1977年に八街学園高校に改名し、普通科を設置。1995年に現校名となる。

「民間大手企業出身の校長」というのは、恐らく現任の西村清氏と、その前任の天野隆司氏であろう。

天野氏名古屋大学法学部卒業後、日本興業銀行(現・みずほ銀行)に入行、2007年から6年間同校の校長職を務めた。

西村氏慶應義塾大学商学部卒業後、東京芝浦電気東芝)に入社、2001(平成13)年に東芝エレベーターの広報部長を務めたのち、翌2002(平成14)年より同校運営法人の理事長に就任。校長職との兼任は、天野氏の校長職退任のあとからであろう。

「民間大手企業出身」とは言うものの、西村氏は創業家の人物であろう。同校の創立者は西村繁である。

1952年生まれの天野氏にかんしても、55歳前後での転身であるから、単なる天下りにすぎないのではないか。それをもって「招聘」などと言うのだとしたら、噴飯ものである。

民間企業の論理?

同校ウェブサイトでも「社会経験豊富な教員の積極採用」を謳っているように、同校は、いっとき教育業界でもはしかの如くに流行った、民間企業の論理を積極的に導入していることを強調したいのだろう。

ならば非公開ではなく、公募で優れた人材を採用するのが民間企業の論理に沿うのではないか。

そもそも、待遇を明示しろ。給与をいくら出すのかはっきり言え。待遇のはっきりしない教職員(社員)募集が民間企業にあるか。

学校の民間企業感覚なんてこの程度であろう。

「先進的かつ改革的な私学」を自称するが、労働者(教職員)にとっては旧態依然の私立校にすぎない。

江戸川学園取手:傷害容疑で教員逮捕

6741teacher.seesaa.net

9月24日(日)、江戸川学園取手茨城県取手市)の男性教員(27歳)が、取手市内にある飲食店店長の女性(21歳)の女性に怪我を負わせた容疑で逮捕された。

 

ツイッター上の報告によれば逮捕された教員は今年度高校3年6組の担任で、担当教科は英語であったようだ。

その2日後、9月26日(火)に同校は、9月から来年3月までの期間で勤務する非常勤講師の募集を始めた。「9月から」とは書かれているが、実際は言うまでもなく10月からであろう。なおこれは急募案件である。

f:id:RYUSUKE:20171001094140p:plain

時期的に見て、この案件で採用される非常勤講師は、逮捕された教員の補充とみて間違いない。

傷害事件を起こしたことは教員自身の個人的な問題なので、学校には責任はない。

他方で、この補充で採用される講師が担当するであろう学年には高校3年生も含まれるようだが、卒業前の最後の授業期間をぽっと出の新任講師に担当させることには、学校として道義的責任は感じないのであろうか。他の教員で負担を案分するということは考えなかったのであろうか。

生徒が入学から卒業(または退学)するまで面倒を見るのは、学校の責任である。その意味で、この対応でもって本校が誠意ある責任を果たしているとは言いがたい。

私立校 教員採用の現状 (1)

登録している私学教員求人募集サイトからメールが来た。

曰く、朋優学院高校(東京都品川区)より非公開の人材探しを依頼されたという。

f:id:RYUSUKE:20170923181018p:plain

かつてこの学校に応募し、書類落ちしたことがある。だからこの学校からこのような案内が届いたことは、まさしく噴飯ものである。

f:id:RYUSUKE:20170923181237p:plain

もっとも、過去に朋優学院に応募し落とされた応募者に求人サイトが誘いをかけていることを、同校は知る由もないので、笑いの物種にされるとしたら、いささか気の毒だろうか。

他方、同校はこの求人サイトを通じて不合格通知を出しているので、応募歴のある登録者の情報を把握していないという点で、同サイトこそは笑われるべきかもしれない。それとも、個人情報だから過去の履歴は押さえていないのかも。

かつて落とされた高校から再応募の依頼を受けたことは、他にもある。成立学園(東京都北区)である。

f:id:RYUSUKE:20170923182400p:plain

このメールが届いたのは年度末の3月27日であった。この時点で拙は入職先が決まっていたので、言うまでもなく応じなかった。

失礼な話である。

私立校への入職活動も、一般企業へのそれと労力は変わらない。一校受験するのにどれだけの労力を払っていると思っているのか。否、現職教員が一日仕事を休むことの困難さは、恐らく一般企業の比ではない。現職教員の転職活動は極めて難しいのだ。

筆記、模擬授業、面接とそれぞれの試験のためにその都度学校へ来させて不合格にした受験生に「人が足らなくなったからもう一回受けて」とは、なんとも手前勝手な論理だ。

自校の職員が離職するのか、それとも採用内定者がキャンセルしたのか、定かではないが、学校経営者は職員または入職予定者が逃げないような経営をすべきである。自前の労働者に手厚くない学校が、生徒にいい教育を施せるはずもないというのは決して暴論ではない。

余談だが、かつての職場で次のような事態が起こった。7月いっぱいで辞めますという話を、7月30日にした常勤講師がいた。実際に夏休みが明けて2学期になったら、その教員はいなくなっていた。

その話を聞いたとき、この学校終わってんなと思った。

千葉英和高

f:id:RYUSUKE:20170823165523p:plain

千葉県八千代市に所在する高校。運営する法人は聖書学院といい、本校の旧校名も聖書学園高校といった(1973年まで)。恐らく、千葉県内唯一のキリスト教系学校である。

旧「下志津陸軍飛行学校」跡地に立地するが、鉄道駅からのアクセスが悪く、徒歩圏内に駅はない。同県鎌ヶ谷市の「神尾塾」によれば、生徒の8割は自転車通学とのこと。最寄りの村上駅京成本線)から自転車に乗りかえる生徒もいるかもしれないが、その大多数は、自転車で通学できる範囲に居住している地元の子どもたちであると予想される。

なお八千代松陰とは校地を接している。

学部新卒・専任教諭の初年度年収は372万円、同・常勤講師は328万円。月額は不明。

年額をくらべてみました

f:id:RYUSUKE:20170823230322p:plain

千葉、埼玉、神奈川の各県に所在する私立校のうち、当サイトが給与の年額を把握または独自に算出しているところをまとめてみた。厳密に言えば当サイトは秀明八千代の求人募集を紹介してはいないが、系列校の秀明および秀明英光高(いずれも埼玉県)と待遇は同じと見なして考える。

上掲の表のうち、本校(千葉英和高)、八千代松陰、秀明八千代は同じ千葉県八千代市に所在しているので、これらを比較することは極めて興味深い。というのも、恐らく各校は相互に近隣校の労働条件をそれとなく把握し、参考にしている(はずだ)からである。

常勤講師の初年度年額において、本校(328万円)と秀明八千代(327万円)とで近似しているのが、その一例となるであろう。本校の専任教諭の初年度年額(372万円)は、八千代松陰の常勤講師のそれ(372万円)を意識して設定されたものと推察されるが、専任に他校の常勤講師並みの条件しか用意できていない時点で、軍配はお隣さんに上がっている。

初年度年額の比較において言えば、八千代松陰>秀明八千代=本校といった序列を示すことができるだろうか。また、千葉明徳は専任の初年度年額(315万円)がやはり抜きん出て安いことも、付け加えておこう。

進学実績

JS日本の学校によれば、2017年度大学入試においては、国立大では千葉大1名、東北大1名、信州大1名が合格している。ただ毎年安定的にこれらの大学に合格者を出しているわけではないようだ。

また私立大については、日大12名、東洋大22名、駒沢大10名、専修大2名の合格者を出していることから、日東駒専あたりが本校のボリュームゾーンかと思われる。

先にも触れたが、本校は立地が悪く鉄道駅から遠い。自転車通学の生徒が多いということは、近隣の子どもたちが多く通ってきていることを示唆し、他地域から学力の高い生徒を呼び込めていないことを窺わせる。

そもそも千葉県は、こと高校入試においては、まだまだ県立千葉高を筆頭に公立高校が根強い人気を持っている。中学を持たない本校が学力の高い生徒を集めることは、今後も難しいだろう。

なお不思議なことに、本校ウェブサイトには進学実績を示すページが見当たらない。